コメントの中の質問に対して、膀胱頚部硬化症の治療後における尿流量測定検査(ウロフロメトリー)は行わないと明言しました。なぜなら、元来、膀胱頚部硬化症は器質所見が出現する以前から排尿障害が存在する筈なので、器質所見が改善しても尿流量測定検査(ウロフロメトリー)では、それほど変化はでないであろうという私の考えからです。
しかし、実際に検査もしないで明言したことに、科学的医学的根拠を欠いたと少し反省をしました。そこで、2年以上通院している経過の良い患者さんに、無理を言って超音波エコー検査と尿流量測定検査(ウロフロメトリー)を実施しました。
患者番号21764、初診当時32歳の男性です。
平成19年4月ごろ、運動中に恥骨の奥が痛くなり歩けなくなりました。早速、地元の整形外科を受診をしましたが異常を認めず、安静にしなさいとのこと。不安定ながら歩けるようにはなりましたが、そのうち、左右の股関節まで痛くなり走れなくなってしまいました。整形外科・外科・内科を転々と診察を受け、MRI検査まで行いましたが異常を認めません。たまたま尿管結石で泌尿器科を受診した時に「慢性前立腺炎ではないか?」という言葉を聞き、平成20年1月に高橋クリニックを受診しました。
上の写真は、その時の超音波エコー検査です。当時の私は現在ほど超音波エコー検査の分析能力はありませんでした。今から拝見すると膀胱括約筋の肥厚が目立ちます。膀胱三角部も同じく肥厚しています。膀胱出口に硬化像も認められます。
尿流量測定検査(ウロフロメトリー)では、明らかな排尿障害の排尿曲線を示しています。たまたま検査器械のプリンターの調子が悪く、きれいにグラフが描出されていませんが、力のないダラダラした排尿曲線です。70秒以上かけて自尿510ml、残尿73ml、最大排尿速度20.5ml/秒、平均排尿速度7.1ml/秒しかありません。
慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)は32点とかなりの具合の悪さを示しています。
膀胱頚部硬化症による排尿障害が原因の慢性前立腺炎症状と判断して、早速、α-ブロッカーを処方しました。
1ヶ月後、恥骨の痛みは半減、股関節の痛みは70%になりました。
4ヵ月後、恥骨の痛みは30%、股関節の痛みは50%になりました。
7ヵ月後、恥骨は10%、股関節は20%、
10ヵ月後には、すべての症状が5%以下にまで落ち着き、そのままお薬をもらいに3ヵ月ごとに来院しています。
平成22年5月の超音波エコー検査の所見です。膀胱括約筋の肥厚はかなり改善されています。
尿流量測定検査(ウロフロメトリー)は期待していなかったのですが、驚くなかれまるで別人のようです。自尿は297ml、残尿は測定不能、21.6秒で排尿を完了しています。
慢性前立腺炎症状スコア(NIH-CPSI)は32点だったのが現在何と0点です。