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Channel: 慢性前立腺炎・膀胱頚部硬化症
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慢性前立腺炎に対する大豆イソフラボンの臨床治験募集

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大豆イソフラボンが慢性前立腺炎症状に効果があるらしいことは分かっているのですが、公の文献がありません。
そこで、大豆イソフラボンに関与している会社と共同で臨床治験を行うことにしました。
内容は慢性前立腺炎症状の治らない方で大豆イソフラボンを服用してもOKな方を募集しています。治験期間は3ヵ月間で、初回に検査、3カ月間大豆イソフラボンを服用していただき、その3カ月後に同じ検査というシンプルな治験です。
3ヵ月の間は、特別な事がない限り来院する必要はありません。
検査内容は、治験の前後に、国際前立腺スコア・NIH慢性前立腺炎症状スコアの記録と超音波エコー検査・尿流量測定検査(ウロフロメトリー)、前立腺マッサージ後の検尿を行うだけです。
3カ月間分の大豆イソフラボンは無償提供です。


大豆イソフラボンと一酸化窒素NOとの関係

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排尿障害の治療薬としてのシアリスの登場で、一酸化窒素NOに対する考え方を改めた思いです。
大豆イソフラボンのアグリマックスの会社から、下記の文献を提供していただきました。
これを読むと、アグリコン型イソフラボンの平滑筋に関する作用機序にも一酸化窒素NOが関与している事が分かります。
Noisoflavone2summary
1. The aim of the present study was to assess the effects of isoflavone aglycones (IFA), containg 32.9%IFA,on the production of nitric oxide (NO) and systoric blood pressure (SBP) in stroke-prone spontaneously hypertensive rats (SHRSP).

2. twelve male SHRSP rats, aged 5 weeks, were used. Rats were devided into two groups: (ⅰ) the IFA group (n=6) ; and (ⅱ) the control group (n=6). Administration of IFA (20mg/kg equivalent of isoflavones) resulted in a significant decrease in SBP in the IFA-treated group compared with the control group.

3. Nitric oxide levels in the urine and serum were also significantly higher in the IFA-treated group than in the control group. Significantly higher levels of endothelial NO synthase with control group.

4. Isoflavone aglycones could decrease SBP significantly by increasing the formation of NO.

Noisoflavone【要約】
1. 本研究の目的は、卒中体質の本態性高血圧ネズミ(SHRSP)中の一酸化窒素(NO)の産生、および収縮期血圧(SBP)を介して、32.9%のIFAを成分としたイソフラボン・アグリコン(IFA)の影響を評価することであった。

2. 5週齢の12匹のオスの本態性高血圧SHRSPネズミが使用されました。ネズミは2つのグループへ分けられ
(ⅰ) IFAグループ(6匹)、(ⅱ)対照群(6匹)である。
IFA(イソフラボン20mg/kg相当量)の投与によって、対照群と比較して、IFA治療グループ中の収縮期血圧SBPの著しい減少という結果が得られた。

3. 尿中と血清中の一酸化窒素NOレベルは、対照群と比較して、IFA治療グループでさらに著しく高かった。また、対照群と比較して、内皮細胞のNOシンターゼ酵素活性が著しく高いレベルであった。

4. イソフラボン・アグリコンは、NOの産生を増加させることにより収縮期血圧(SBP)を著しく減少させることができた。

Nosynthetase【備考】
この図は、アミノ酸アルギニンから一酸化窒素を合成する模式図です。
カルシウムイオンの刺激により、NOシンセターゼ(シンターゼ)酵素が、アミノ酸アルギニンをアミノ酸シトルリンと一酸化窒素NOを合成することを示しています。
今回の研究論文の結果からは、大豆イソフラボン中のアグリコン型イソフラボンは、このNOシンセターゼ活性を高めて一酸化窒素NOの合成能力を高めるのです。
一酸化窒素NOは、平滑筋の緊張を緩め、さらに弛緩させますから、膀胱三角部や膀胱頚部、前立腺の平滑筋の興奮も抑えてくれるのです。
したがって、大豆イソフラボンが排尿障害が原因の慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の治療に利用できる根拠になります。

これから短絡的に思いつくことは、アルギニン・大豆イソフラボン・シアリスの組み合わせ効果です。

シアリスが排尿障害改善剤として承認されました!その名は「ザルティア」

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Zaltiaかねてから話題にしていたシアリスが今日、厚生労働省から「前立腺肥大症」の排尿障害の治療薬として承認されました。その名前は「ザルティア」です。
5mg錠と2.5mg錠の2種類になります。保険薬になるので、現在のシアリスよりは価格が下がるでしょう。もしかすると、α-ブロッカーのハルナールの薬価と同程度かも知れません。

発売は未定ですが、夏前には市場に出るでしょう。

「前立腺肥大症」の治療薬ですから、若い男性やご婦人には保険で処方出来ませんが、薬価がついて安価になるので、今自費で出している人にも朗報です。

シアリスをはじめとするPDE5阻害剤は血管内皮細胞の賦活(ふかつ)作用があります。その結果、血管内皮細胞の増殖・血管新生作用があるので、老化b防止作用や認知症の患者さんの症状改善にも注目されています。
また、動脈硬化の予防や改善にも効果があるので、アンチエイジングの治療薬としても注目を浴びています。
シアリスはまだまだ様々な利用価値を含んだ可能性を持った薬剤です。

慢性前立腺炎の症状#18 「顔の痒み」

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29歳の男性患者さんです。
平成24年4月に食中毒に罹患しました。その後から、顔の痒み、陰茎の痒み、陰嚢の痒みが出現しました。皮膚科を2軒はしごし、色々な軟膏と抗アレルギー剤の処方されましたが改善しません。特に顔の痒みが辛く、インターネットで検索しますが、ハッキリした解決策が得られないでいました。
陰嚢も痒かったので、「陰嚢の痒み」という言葉で検索したところ、高橋クリニックが候補に挙がり、意を決して平成25年7月に高橋クリニックを受診しました。
Face29cp202061後日、患者さんが持参したCG画像です。赤い斜線で示している部分が、顔の痒み部分です。

Face29cp20206echo患者さんを泌尿器科的見地から検査をしました。
超音波エコー検査では、膀胱括約筋の変形、膀胱頚部硬化像、前立腺結石を認めます。前立腺の大きさは16ccで正常範囲内です。これら所見から、排尿障害を強く疑います。

Face29cp20206flow尿流量測定検査(ウロフロメトリー)の結果です。
予想通り、幾つもの山が出現する排尿曲線で、前立腺肥大症型の所見です。残尿量測定検査は6ml認めました。
1日の排尿回数は10回以上の頻尿で、緊張すると尿が出し辛い事も経験しています。水分も1日2リットル以上飲んでいました。

Face29cp202062早速、排尿障害として治療を開始しました。
α-ブロッカー(エブランチル)と1日の水分量を1リットル以下に制限しました。治療1ヶ月後の8月の顔の痒みの状況です。こめかみの痒みと頬の痒みがなくなりました。陰茎の痒みは20%に陰嚢の痒みは半分になりました。

Face29cp202063治療4ヵ月後の11月の顔の痒みの様子です。
額の痒みとあごの大部分の痒みが消失しました。
平成26年2月現在、治療7ヵ月後ですが、顔の痒みは5%~10%程度、陰茎の痒みは消失、陰嚢の痒みは10%~20%くらいだそうです。
排尿障害の治療で、難治性の顔の痒みが落ち着いたという患者さんでした。

慢性前立腺炎の症状いろいろ

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慢性前立腺炎を訴える患者さんを多く拝見していると、様々な症状を合併している方に遭遇します。
排尿障害が原因の慢性前立腺炎症状の患者さんを治療していく過程で、一見無関係と思われる随伴症状が治るのです。それら随伴症状も慢性前立腺炎の症状の一面と考えれば、その随伴症状で長年苦しまれている患者さんを助けることができます。
今まで、このブログで書きためた随伴症状をここに書き出しました。

①またの付け根が痛い=会陰部痛
慢性前立腺炎と言えば、会陰部痛と思われるくらい代表的な症状です。

②陰嚢が痒い=陰嚢掻痒症
慢性前立腺炎で陰嚢が痒いなんて思われない症状です。実は、排尿障害がその原因だったのです。

③尿道分泌過多症
慢性尿道炎や非淋菌性非クラミジア性尿道炎と誤診される病態です。漫然と抗生剤や抗菌剤が処方されてしまう症状です。

④尿臭
自分がオシッコ臭いと思ったり、他人に臭いと思われてしると妄想してしまう病態です。

⑤緊張すると尿が出ない

⑥急性腎盂腎炎

⑦血精液症

⑧多彩な症状

⑨尿線が割れる

⑩朝一の尿が出にくい

⑪慢性胃炎

⑫陰茎の根元が痛い

⑬鬱病

⑭睾丸の痛み

⑮副鼻腔炎

⑯逆行性射精

⑰睾丸がめり込む

⑱顔の痒み

膀胱頚部硬化症についてインタビュー

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ある有名医療機器メーカーの研究開発部門から、膀胱頚部硬化症についてインタビューしたいと申し出があり、3月6日(木)午後3時30分に担当者二人にお会いし、午後5時50分まで熱弁をふるいました。

欧米では「膀胱頚部硬化症Bladder Neck Sclerosis」なる名称はほとんど使用されず、主にMedian Bar(柵形成)、 Bladder Neck Obstruction(膀胱頚部閉塞症)、 Bladder Neck Contraction(膀胱頚部委縮症)、Bladder Outlet Obstruction(膀胱出口閉塞症)などの名称で論じられています。しかし、これらの意味するところは、ほぼ同じ意味です。

アメリカでは年間74万人の膀胱頚部硬化症と診断される患者さんが存在し、その80%はα‐ブロッカーで治療されています。薬剤治療で効果が得られない患者さんが内視鏡手術になるそうです。(そのメーカーの収集した情報の受け売りですが・・・)

Bnsballon_2以前に、膀胱頚部硬化症に対するバルーンカテーテル治療について私独自で臨床検討したことがあり、その記事に興味を持たれ尋ねて来たのです。

Bnstind海外では膀胱頚部硬化症治療の矯正機器がすでに存在し、現実に使用されています。その器具を見ると、『なるほど!』と納得できる形状でした。
膀胱頚部硬化症を正面から論じているのは、現在私くらいなものですから、メーカーも開発の糸口を掴むために私の所に訪問したのです。
日本の文献で調べると、1976年泌尿器科紀要(22巻6号)に「膀胱頚部硬化症の臨床的研究」と題して三重大学の山崎義久先生が論じています。
また、1980年泌尿器科紀要に
・「膀胱頚部硬化症の組織学的検討・膀胱頚部の筋発生・発育からみた病因論」大阪大学・小出卓生著、
・「膀胱頚部硬化症の内視鏡診断」京都大学・岡田謙一郎著、
・「排尿機能検査によるいわゆる膀胱頚部硬化症の診断」近畿大学・金子茂男著
など文献はいくつも見つけることが出来ます。
しかし、ほとんどが関西圏の医科大学や医療機関から出された文献で、関東近県の文献は見つかりません。関東では「膀胱頚部硬化症」なる言葉は死語かも知れないのです。

男女の両者にある原因不明の膀胱頚部硬化症

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男女の原発性膀胱頚部硬化症
Primary Bladder Neck Obstruction in Men and Women

ヴィクターW.ニッティ、MD
ニューヨーク大学医学部泌尿器科、ニューヨーク

Pbno【要旨】
原発性膀胱頚部硬化症(PBNO)は、膀胱頚部が排尿の間に適切にあるいは完全に開かない状態である。
原発性膀胱頚部硬化症PBNOの真実の罹患率を確認するのは難しいが、排尿機能障害を持った男女それぞれの研究調査は、この条件の著名な罹患率を実証する。
原発性膀胱頚部硬化症PBNOによって引き起こされた畜尿症状(頻度、尿意切迫、切迫性尿失禁、夜間頻尿)および排尿症状(尿勢減弱、排尿開始遅延、残尿感)を含んでいる。
神経筋による機能障害や繊維症を含むPBNOの病因に関して多数の理論がある。
膀胱頚部硬化症PBNOの診断は、排尿時のビデオ・ウロダイナミクス、同時の圧力流量測定を備えたウロダイナミクス検査、膀胱頚部の画像で正確に作ることができる。
治療は、症状の重症度やウロダイナミクス検査所見や治療による効果に応じて、薬物療法による経過観察から外科的治療に至るまで多岐にわたる。
この報告は、罹患率、膀胱頚部硬化症PBNOの病因、診断および治療に関して現在の最先端技術を調査する。
RevUrol2005;7(suppl 8):S12-S17] 2005 MedReviews

原発性膀胱頚部硬化症(PBNO)は、排尿の際の男性の前立腺肥大症や女性の性器脱に起因する解剖学的閉塞が特に見られず、横紋括約筋(尿道括約筋)の過活動あるいは尿流閉塞によって膀胱頚部が十分に開かない状態を示す。
膀胱頚部硬化症PBNOは、1933年Marionによって最初に報告された。後に1973年、Turner-Warwickらが膀胱頚部機能障害を診断するためにウロダイナミクスと膀胱尿導造影を使って、下部尿路症(LUTS)の既往の長い50歳代やそれ以下の年齢の男性を調べた。
同様に、NorlenとBlaivasは1986年に、23人の若年・中年の男性膀胱頚部硬化症を診断した。この23人はそれまでに前立腺炎、過活動膀胱、心因性排尿機能障害と診断されていた。
膀胱頚部硬化症PBNOは、女性にも臨床では存在すると報告された。1984年にDioknoらによって、1987年にAxelrodとBlaivasによって、それぞれ3人の女性の症例を報告している。

【病因論】
 膀胱頚部硬化症PBNOの原因は正確には解明されていない。状況に応じていろいろな理論が存在する。最初の理論は膀胱頚部に生じた構造的変化着目した理論である。例えば、線維化狭窄や過形成をMarionが最初に提唱した。Leadbetterの提唱した理論は、間葉組織の自然消退障害や非筋原性結合組織の大量の含有物の存在を示唆している。それらは平滑筋の過形成、繊維組織の拘縮や炎症性変化の結果として生じる。
同様に、Turner-Warwickらは、排尿筋/三角筋組織の異常な形態に起因する非効率な膀胱頚部の開放について記述した。
 膀胱頚部硬化症の神経学的病因論も交感神経の機能障害という形で示唆された。Croweらが示したところによると、ニューロペプチドY免疫反応性神経の密度増加が、膀胱頚部に存在する交感神経作動性の収縮システムにあり、膀胱頚部協調障害の男性から得られた膀胱頚部組織中に認められた。
 明らかな膀胱頚部機能障害の症例中には横紋筋性尿道括約筋の異常の結果かも知れない。広く認知されたところでは、随意排尿の初めに起き、外尿道括約筋の弛緩時である。最近のYallaとResnickは次のように示している。外尿道括約筋が弛緩する際に、膀胱内圧と膀胱頚部の圧力が増加し、膀胱内圧の上昇速度が膀胱頚部の圧力より大きい。膀胱内圧が膀胱頚部の圧力を超えた時点で、数分遅れて排尿が始まるという現象が起きる。55歳以下の排尿機能障害や閉塞型の排尿曲線を示す84人の台湾人の調査によると、33%の頻度で膀胱頚部硬化症の患者がいるとYangらが報告している。
 女性の膀胱頚部硬化症の頻度や罹患率のデータは少ない。数少ない報告者の女性の実態のレポートの多くもまた次のような所見である。それは一定の患者の中には尿道括約筋が機能的に膀胱頚部まで延長している。それらの患者は排尿初期の圧力変化がわずかに変化している。別の研究では、Yallaらの報告によれば、外尿道括約筋の膀胱頚部への機能的延長は男性の48%に認められる。

【備考】
原文の「Primary Bladder Neck Obstruction」を直訳すると、原発性膀胱頚部閉塞症です。原発性とは原因不明という意味ですし、閉塞症を日本で昔から使われてきた硬化症と訳しました。

「ザルティア」 4月17日薬価収載、同日発売!

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排尿障害の治療薬となったシアリスの別名「ザルティア」が、4月17日薬価収載、同日発売になります。
当院でも、やっと保険で処方出来るようになります。もちろん前立腺肥大症という病名の患者さんにしか処方できませんが・・・。
2.5mg118円、5mg230円です。当面は2週間処方の制約がありますが、5mg錠を週3回、例えば月水金とか火木土などのように服用すれば1ヵ月は持つでしょう。薬価が付いたおかげで自費で購入している患者さんも以前より安価に購入できます。


3つも名前がある不思議な薬

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Zaltianoアドシルカ、ザルティア、シアリスこれらは全て「タダラフィル」という同じ薬剤で同じ製薬会社から発売され、使用目的によって商品名と単価が異なる薬です。
アドシルカは「肺動脈性高血圧症」の治療薬で、薬価は20mg1錠1720円です。
ザルティアは「前立腺肥大症」の排尿障害治療薬で、薬価は5mg1錠230円(20mg換算920円)です。
シアリスは「勃起障害(ED)」の治療薬で、実勢価格は20mg1錠2000円前後です。

Zaltiano3治療目標が異なるにもかかわらず、治療薬が同じであるには理由があるのです。
ザルティア=タダラフィルは、一酸化窒素NOの分解代謝障害の作用を持っています。一酸化窒素NOは細胞膜のレセプター(受容体)を介さずに平滑筋細胞に直接侵入し、強い生物活性を持っています。平滑筋内のカルシウムCaを小胞体に取り込ませ、細胞内のカルシウム濃度を低くして平滑筋の緊張を低下、すなわち平滑筋を弛緩させるのです。
平滑筋の中に一酸化窒素NOが存在すると平滑筋は弛緩したままになるので、即座に一酸化窒素NOは分解代謝されます、その分解に関与するのがPDE5という酵素です。何らかの原因で平滑筋内のカルシウム濃度が高いと、今度は平滑筋が収縮・緊張し続けることになります。
肺動脈血管壁の平滑筋が収縮・緊張し続けると、高血圧になります。膀胱・前立腺の平滑筋が収縮・緊張し続けると、排尿障害や膀胱刺激症状が出現します。陰茎動脈の血管壁の平滑筋が収縮・緊張し続ければ、陰茎動脈は十分に拡張しないので勃起しなくなります。
Zaltiano2_2PDE5酵素の関与する一酸化窒素NOの過剰な分解・代謝=平滑筋の病的な収縮緊張をコントロールすれば、血管壁の平滑筋の緊張を緩め、その結果、病的症状の緩和が期待されるのです。これこそがPDE5酵素阻害剤であるタダラフィル(アドシルカ・ザルティア・シアリス)が、これら病気の治療薬となる理由です。

この薬ザルティアには、上記で解説したように血管平滑筋の緊張を緩めて血行を改善させる働きがあります。血行障害が原因の病気は他にもあります。例えば脳血管障害性の認知症や神経障害などいろいろです。ザルティアによって生まれた余剰の一酸化窒素NOは血管新生を促す作用も持っています。ですから動脈硬化が主な病態生理である老化現象の促進を抑える働きも出てきます。いわゆるアンチエイジングの治療薬としての効果も期待できるのです。

副作用として興味あるのは、非動脈性前部虚血性視神経症という視力低下を来すことがあります。網膜の毛細血管には平滑筋はありません。その手前の細動脈には平滑筋はあります。動脈硬化が進んでいる状態で、ザルティアで血管平滑筋を極端に弛緩させると細動脈は弛緩しますが、平滑筋のない毛細血管は相対的に狭くなり血流が低下し視神経細胞に十分血流が供給されなくなるので、この副作用が生じるのでしょう。このような動脈硬化のリスクのある患者さんの場合には、ザルティアの投与量を少なくして副作用を回避すべきでしょう。

ビジネスモデルについて

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患者さんのブログに下記のような投稿があり、少し炎上したようです。

「アルファブロッカーはご存知のとおり症状を緩和するだけで根治を目指す薬ではありません。
プロダクトポートフォリオマネージメント(PPM)という有名なビジネスの戦略分析手法があります(PPMに関して詳しく知りたい方はネットで調べてみてください)。Tクリニックでアルファブロッカーを処方された患者は一生Tクリニックから薬を購入しないといけないわけですから、これらの既存患者はPPMで言うところの「CASH COW(金のなる木)」といえます。
またT先生はネットで熱心にコメントを記載しており、これを見て新しい患者さんが集まるわけですが、これらの新規見込み患者はPPMで言うところの「STAR(スター)」になります。まれにTクリニックからよそに乗り換える患者さんもいるわけですからこれらの患者さんはPPMで言うところの「QUESTION MARK(問題児)」といえます。
いずれにせよTクリニックをPPMの観点(=ビジネスの観点)でみると金のなる木とスターがほとんどですので相当よくできたビジネスモデルと言えるでしょうね。巷の会社経営者はぜひ彼のビジネスモデルを見習うべきでしょう。
T先生は尿検査もせず訪れた患者さんほぼ100%に「膀胱頚部硬化症」と診断するのはなぜなのでしょうね~?」
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★

私の感想を思いつくままにしたためました。

『アルファブロッカーはご存知のとおり症状を緩和するだけで根治を目指す薬ではありません。』

症状を緩和するための対症療法として、α‐ブロッカーを処方している訳ではありません。
難治性の慢性前立腺炎のほとんどに排尿障害が隠れていて、それを見過ごされているあるいは軽視されているから、根本治療としてα‐ブロッカーを処方しています。
また病気の本質が機能障害という慢性疾患を考えていますから、根治は目指せないと考えています。
もしも本当に慢性前立腺炎=細菌説であるのなら根治を目指していないことになりますが・・・。

『プロダクトポートフォリオマネージメント(PPM)という有名なビジネスの戦略分析手法があります(PPMに関して詳しく知りたい方はネットで調べてみてください)。Tクリニックでアルファブロッカーを処方された患者は一生Tクリニックから薬を購入しないといけないわけですから、これらの既存患者はPPMで言うところの「CASH COW(金のなる木)」といえます。 』

ビジネスに関して私はド素人ですから、ここの部分はよく分かりません。
ただ、根本治療のためにα‐ブロッカーを処方しているのであって、ビジネスで処方するというのなら、それは医師の治療の内です。絶対的な薬剤ではありませんから、効き目がなければ薬剤を中止するのは患者さんの自由です。α‐ブロッカーは他の医師にも処方できる薬剤ですから、高橋クリニックに通院しなくても治療は可能でしょう。
また、慢性疾患、例えば高血圧・糖尿病・高コレステロール・高尿酸血症(痛風)・慢性気管支炎・肺化膿症・喘息・アレルギー性鼻炎・リウマチなどは、その患者さんに合った治療薬が見つかれば、特別な事が起きない限り一生服用です。この状態も問題になるということになります。
私は慢性前立腺炎=膀胱頚部硬化症=機能障害は慢性疾患と考えていますから、このような治療になるのは当然でしょう。

『またT先生はネットで熱心にコメントを記載しており、これを見て新しい患者さんが集まるわけですが、これらの新規見込み患者はPPMで言うところの「STAR(スター)」になります。まれにTクリニックからよそに乗り換える患者さんもいるわけですからこれらの患者さんはPPMで言うところの「QUESTION MARK(問題児)」といえます。 』

忙しい臨床の隙間時間を利用しての、真摯な回答も客寄せパンダ商売という観点から問題になる訳ですね?

『いずれにせよTクリニックをPPMの観点(=ビジネスの観点)でみると金のなる木とスターがほとんどですので相当よくできたビジネスモデルと言えるでしょうね。巷の会社経営者はぜひ彼のビジネスモデルを見習うべきでしょう。』

ビジネスモデルとしてはよく出来たモデルかも知れませんが、収益の時間的労力的コストパフォーマンスは悪過ぎです。
再診料は124点、処方料は68点で合計192点(1920円)です。平成25年度の再診患者数は延べ人数7千人越え(慢性前立腺炎の患者さんの数は実際は4分の1の2千人弱でしょう。)ですから、全員がα‐ブロッカーの処方のために来院したと考えて、単純計算で1920円×7千人=134万4千円(年間)になります。(指摘されて気づきました。計算違いでした!1344万円でした。サラリーマンであるなら高額ですが・・・)
この投稿者の言う「良く出来たビジネスモデル」であるためには、再診料+処方料が合わせて1万円くらいなら、1万円×7千人=7千万円となりますから信憑性があるモデルになります。
現実的には毎月12万円弱(これも間違い!120万円弱)の収入を得るために、この陳腐なビジネスモデルを私が考えたと思われるのは、経営に関して私が全く無能だと思われいるように感じます。

『T先生は尿検査もせず訪れた患者さんほぼ100%に「膀胱頚部硬化症」と診断するのはなぜなのでしょうね~?』

理由は簡単です。
世の中のほとんどの医師が慢性前立腺炎=細菌説です。
私だけが慢性前立腺炎=膀胱頚部硬化症だと信じている医師だからです。
当院を受診する患者さんの多く(99%以上)がドクターショッピングした挙句に、当院を訪れるからです。
当然、慢性前立腺炎=細菌説で散散治療されています。抗生剤を何回も変えられ、セルニルトンを長期に服用し、細菌が検出されなくなると「治った!」と診断され、症状が改善していないと「気のせい!」と宣告される患者さんがほとんどです。
そのような境遇の患者さんに対して、私が同じように細菌説を唱えて、初めからまた抗生剤・抗菌剤治療するのはとても愚かしいことです。尿一般検査は実施していますが、細菌培養は行いませんし、ましてや前立腺マッサージも行いません。
ただし、忙しい時に来院した患者さんや尿が十分にたまっていない患者さんには、超音波エコー検査のみで診断しています。尿流量測定検査(ウロフロメトリー)も尿検査も省くことはあります。
治りの悪い慢性前立腺炎は=排尿機能障害=排尿障害=膀胱頚部硬化症という独断で治療を進めています。
排尿障害を念頭に置いて治療しますから、膀胱・前立腺・尿道の平滑筋の緊張を緩めるために、α‐ブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)・β3刺激剤(ベタニス)・PDE5阻害剤(ザルチア)を処方し、訪れる90%以上の患者さんに効果を認めます。

もちろん私の考え方が全て正しいとは思いませんし、他の治療で治る方も現実に存在します。それはそれで良いと私は考えます。100人医師がいれば100通りの考え方や治療法があります。そして、それぞれに治療効果は出ている筈です。私の治療が絶対的に正しいと私自身がその事に固執するならば、慢性前立腺炎=細菌説を盲信している輩と同じになってしまします。

2チャンネルを読んで

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前回のブログの内容について、2チャンネルで下記のようなコメントが掲載されていました。
もう少し具体的なデータを添えましょう。(※が私の書いたデータです。)
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
たしかに、経費(スタッフや医療機器)・時間・労力がどのくらいなのかは書かれていませんね。

ただ、ブログ執筆やコメント返信やメール・電話の無料相談と臨床業務とで 一日最低8~9時間労働していると仮定して、1344万円じゃあペイしないだろうなあとは想像できますね。
(※午前・午後の診療と昼の休憩時間を利用して月に25件~30件の手術をこなしています。膀胱頚部硬化症の内視鏡手術は年間で15件程度で、その他の手術は前立腺肥大症・神経因性膀胱・粉瘤・アテローマ・傍尿道口嚢胞・尖圭コンジローマ・包茎手術・パイプカット・修正手術・膀胱腫瘍・陥入爪手術などです。つまり泌尿器科医がたずさわる手術のほとんどを行っています。開業医ですから悪性疾患は極力手を付けていませんが。その隙間時間を利用して、無料の電話相談・ブログのコメント回答、地域医師会や製薬会社の講演会の講師、地元中学校の校医として健康診断も行っています。)

看護士(?)事務員(?)さんにかかる人件費で年間200万円(2・3人で午前中までで仕事が終わってる様子)、 医院の医療機器のリース料や設備費で年間100万円と仮定して、 手取りは1044万円となります。
単純に経済的な面だけを見ても、ベテラン開業医としては多くない収入でしょう。
(※人件費はそんなに安くはありません。3人の人件費がを午前午後合わせて年間で600万円越え、医療機器リース料や備品薬剤諸経費で年間600万円越え、建物の借金2億4千万円の返済が年間1200万円超えですから、再診料+処方料の1344万円だけでは1千万円以上の赤字です。)

また、先述のブログ更新や無料相談に費やす労力はなかなかの負担でしょう。

そうすると、採算が合わないというのもわかる気がします。
(※採算やコストパフォーマンスのことだけ考えれば、非効率ですが、悩んでいる人を助けるという意味ではグッジョブです。)

磁気刺激装置

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Tmu1100nihonkoden今度、日本光電から磁気刺激装置なるものが発売されます。
ご婦人の過活動膀胱の治療装置ですが、間質性膀胱炎や慢性前立腺炎の患者さんにも有効かも知れません。
1100mecha日本光電の説明動画から静止画を起こして作成しました。
椅子に仕掛けた高周波のコイルから磁力線が発生し、骨盤底筋や神経を刺激します。

Tmu1100mecha磁気刺激は、骨盤底筋を鍛え、また陰部神経を介して、脊髄中枢を介して膀胱に効果をあげるようです。「・・・あげるようです」と述べたのは、磁力線が神経や筋肉を本当にリラックスさせることが出来るのか?疑問に感じたからです。もしも本当にそうであれば、膀胱や前立腺の平滑筋こそリラックスされてもおかしくないでしょう。

Neocontrolこの手の器械は以前から「ネオコントロール」という名称のアメリカ製品が存在し、尿失禁の治療装置として有名でした。有効率は80%前後です。日本では未承認でしたから、自費治療で1回3千円、週2回で10回の治療で1コースというものでした。
尿失禁に限らず、過活動膀胱や慢性前立腺炎にも効果があるという情報もあります。
日本光電が日本で初めて承認が取れたのです。しかし保険で使用するには、医療機関の施設基準があり、泌尿器科医師が常勤二人以上という制約があるのです。高橋クリニックのように私一人の開業医では施設基準を満たすことができないのです。
また、保険適応はご婦人の過活動膀胱だけです。男性には使用できない?ことになっています。
この治療の保険点数は70点(700円)ですから、自費で700円になります。再診療が124点の3割負担で370円ですから、700円+370円=1070円が当院での患者さん負担になるでしょう。

でも、間質性膀胱炎や慢性前立腺炎に対して、この装置に効き目があるのであれば、ネオコントロールと日本光電製品とを価格面や性能面で比較検討して購入しようかと考えています。

ところが、アメリカ製の「ネオコントロール」は日本では販売中止になっているそうです。日本での販売台数が伸びなかったのが原因だったらしいとのこと。選択肢は一つしかありません。日本光電の器械は定価で350万円です。さぁどうしましょう?

高橋クリニックが、この器械を購入する前に経験してみたい人は、有楽町にあるスバル医院をご紹介します。私の出身大学の大先輩の中村先生が院長です。私が紹介していたと言っていただければ、ネオコントロールで治療してくれるでしょう。

ネオコントロールではありませんが、同じ治療目的で干渉低周波の治療器「ウロマスター」というのもあります。品川区中延駅前の仲田クリニックにあります。仲田先生は私の2年先輩の泌尿器科医です。やはり私が紹介していたと言っていただければ、治療してくれるでしょう。

磁気刺激装置とファラデーの法則

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Faladylaw前回解説した磁気刺激装置の作用効果で私が勘違いをしていたので、ここで詳細に原理・効果を解説しましょう。

磁力線が生体(骨盤底筋・神経)に直接作用して生物活性を促すものだと思っていましたが、実はそうではありませんでした。
Hatsudenki学生時代に勉強した物理学の知識でファラデーの法則というものがあります。伝導体の近くで、磁場に方向性や強弱に変化を与えると、渦電流(うず電流)が発生するという原理・原則です。この原理を利用して発電機が電気を作っています。水力発電も火力発電も原子力発電もガスタービン発電も、すべてこの原理の発電機を利用しなければ電気を作れないのです。

Falady1患者さんの椅子の下に仕掛けられたコイルから強い磁力線が発生します。しかし、この磁力線は、方向(ベクトル)と強さに絶えず変化しています。
【図:コイルから外側の基盤に磁力線が流れている(緑の線)場合と、外側の基盤から中心のコイルに磁力線が流れている(赤い線)場合とでは、下部尿路・膀胱に流れる渦電流は交互に逆方向に流れ刺激する。】

Falady2骨盤底筋や神経は電線と同様に伝導体ですから、磁力線に直角に渦電流(うず電流)が流れます。この渦電流は磁力線の方向に変化し、電流の向きが交互に変化します。つまり、皮膚を通さずに深部の生体組織に、直接電気が流れ刺激されるのです。
磁気刺激装置の「うたい文句」の骨盤底筋を刺激して、過活動膀胱の頻尿を改善させる理由には、かなりの論理の飛躍があります。骨盤底筋は骨格筋であって膀胱などの内臓の筋肉ではありませんから、鍛えても頻尿の治療には役立ちません。腹圧性尿失禁には効果があるかも知れませんが・・・。もしもこの理論が正しいのなら、腹直筋を電気刺激すると、急性胃炎や胃潰瘍の痛みが治ると言っているようなものです。
もう一つは陰部神経などに磁気誘導の電気が流れて刺激されて、その結果、脊髄レベルの尿意中枢が刺激されて頻尿が改善するというものです。ところが、この理論にも疑問を感じます。磁気誘導された無機質の電気刺激が、それなりの意味を持った生理的な神経刺激と同じ振舞いをして、膀胱の過敏を抑制するという考え方に・・・、そんな都合のよいことがなぜ起きるのか?という疑問です。

ところが、この磁気刺激装置が厚労省から認可を得たということは、臨床治験を実施して過活動膀胱の治療に有為に効果が得られたということです。膀胱や尿道を含めた下部尿路に電気を通すと、尿失禁を伴うような強い頻尿が軽減するというのは、論理的に不思議な現象です。下部尿路の平滑筋や神経が電気刺激で今までの興奮を納めてくれるというのです。

表の理論にはない、本質的な理論が隠れて存在するのでしょう。膀胱平滑筋の緊張を緩める、α‐ブロッカーやβ3刺激剤や抗コリン剤やPDE5阻害剤(ザルティア)などの薬理作用・効果と同じ過活動膀胱を治療できる訳ですから、磁気刺激装置の作用も膀胱・前立腺の平滑筋の緊張を緩める効果があると考えても間違いないでしょう。

恐らく、あくまでも恐らくですが、磁気刺激で誘導された渦電流が、この病気で過剰反応している膀胱・前立腺の平滑筋を一時的に麻痺させているのかも知れません。そうすると、神経という正規のルートで入力侵入した病的電気刺激パルスが、膀胱・前立腺の平滑筋に拒否されるので、病的症状が改善するという論理です。私が実施している仙骨神経ブロックによる治療と似ているかも知れません。

Kura4ファラデーの法則だけが磁気刺激装置の治療根拠なのか?と考えながら、いろいろ調べてみると、磁力線による活水装置の解説を発見しました。
磁力線に直角に水流を流すと、水分子が細かくなるという原理です。化学で教わった水分子はH2Oは、それ単独フリーの状態で存在している訳ではなく、集団の塊で存在しています。その塊が大きい分子量であると、溶媒としての水の働きが低下します。水分子の大きな集団を細かい塊にしてあげるのが磁力線活水器なのです。
血液は、そのほとんどが水ですから、その水の分子が細かくなればなるほど、生体内の毛細血管内の血液本来の役目は十二分に発揮されるでしょう。すると膀胱や前立腺の内部環境は改善され、それが原因の症状も薄皮を剥ぐように改善するでしょう。

Jikiionさらに活水装置で水流内の様々な物質はイオン化し、水道管の状態を安定させます。
毛細血管内も同様の現象が起き、血流の改善と、生体にとって必要な物質のイオン化で活性化するでしょう。

今回の日本光電の磁気刺激装置は10Hzで磁力線の方向が逆転しています。10ヘルツは1秒間に10回ですから、0.1秒間に1回の間隔で磁力線の方向が変化しています。
血管内での血液の流れは、毎秒60cmですから、0.1秒に6cmの血流に磁場が掛かることになります。

この治療器の1回の治療時間は25分間ですから、25分×60秒×60cm=90000cm=900mの血流を活性化していることになります。0.1秒6cmの血流が約1ccの血液量と換算して、900m÷6cm=15000cc=15㍑という相当な量の血液を活性化しています。一人の人間の血液量は4㍑~5㍑ですから、1回の治療時間で全身の血液を3回~4回活性化していることになります。

前立腺結石

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前立腺結石の存在が、慢性前立腺炎の諸悪の根源だと思っている方も多いようなので、ここで前立腺結石についてテーマを作りました。

前立腺結石と慢性前立腺炎
慢性前立腺炎で来院する患者さんの多くに前立腺結石を認めます。また、排尿障害の強い前立腺肥大症の高齢者の多くにも前立腺結石(しかも大量です)を認めます。この両者の共通は、排尿障害です。ですから、前立腺結石を認めたら、当然のように排尿障害を考えます。

前立腺結石の成り立ち
では、なぜ排尿障害が存在すると前立腺結石が出来るのかを解説しました。あくまでも私の仮説ですが。

前立腺結石と排尿機能障害
前立腺結石と排尿機能障害の関係について、日本泌尿器科学会で報告しました。

前立腺結石の3D画像
前立腺結石を3D画像で観察すると、前立腺結石の違う一面が見えてきます。

血精液症と前立腺結石
血精液症の患者さんの多くに前立腺結石を認めます。前立腺結石=排尿障害=血精液症という思考過程が働きます。学会で報告しました。

磁気刺激装置:NICO Waveの搬入

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Nicowave予てから予告していた磁気刺激装置が8月26日(火)の午後6時から7時にかけて搬入されました。
日本光電の話によると、現時点で北海道、秋田県、千葉県、東京都、沖縄県のそれぞれに1台ずつ、計5台の搬入が決まったとのこと。その東京都で初めて搬入の1台が、高橋クリニックの購入した名誉ある記念すべき1台だそうです。

装置の名称は、「NICO Wave」です。日本光電のイニシャルと磁力線の波を合体した意味ですが、「ニコニコになる磁力線の波」という願いも込められているのでしょう。

さてこの装置が過活動膀胱はもちろんのこと、慢性前立腺炎や間質性膀胱炎の患者さんの治療の選択肢になりえるのでしょうか?期待をしています。
治療時間は25分間、この椅子にただ座っているだけです。説明書には週2回で12回で1クール終了になります。治療期間6週間です。しかし、患者さんの都合によっては、週1回でも可能でしょう。料金は1回700円になります。再診療も含めて1回千円チョッとです。

これで、私の慢性前立腺炎や間質性膀胱炎に対する治療の選択肢は、
①内服薬:α‐ブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフ・フリバス)、ザルティア、ベタニス、抗コリン剤、抗男性ホルモン剤(アボルブ・プロスタール)、デパスなど
②磁気刺激治療
③内視鏡手術
④仙骨神経ブロック
⑤ステロイド注射
の大きく分けて5つに増えました。

【参考】
この記事を書いていた8月27日の午後に、この装置で初めて治療した人がいました。治療直後の感想では、さっきまで感じていた足首の関連痛が軽減したとのこと。馬込薬局で薬剤を頂く時に、クリニックから薬局までの歩行が軽くなったと感想を述べられたそうです。
この患者さん(#30391)は40歳代の男性で、排尿後の会陰部痛、下肢痛、射精後の腰痛、陰嚢掻痒症などの慢性前立腺炎症状で治療を開始し、今までにハルナール、アボルブ、ノイロトロピン、ユリーフ、ベタニス、ザルティアを服用しながら、症状の一進一退を繰り返していた方です。週2回この治療で来院すると決心されたようです。


慢性前立腺炎の薬剤効果による分類

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難治性の非細菌性慢性前立腺炎患者さんには自覚出来ない微細な排尿障害が隠れていて、その排尿障害が物理的な形態異常を作り機能障害を増強し、支配神経を興奮させ特異な症状のソフトウェアを形成し、非細菌性慢性前立腺炎独特の多彩な症状を生み出すのだと私は信じています。
その治療には難渋しているのも事実です。薬剤で容易に軽快する患者さんもいれば、ほとほと困る患者さんもいます。ここに掲げた薬剤効果による簡単な分類は、私の苦労の歴史を物語っています。

①α‐ブロッカー(エブランチル・ハルナール・ユリーフ・フリバスなど)の効く人
十中八九の患者さんに排尿障害が認められます。実際は99%の人に排尿障害があります。
ですから、治療の主軸はα‐ブロッカーになります。70%以上の患者さんがα‐ブロッカーの単独治療でコントロール可能になります。
α‐ブロッカーだけでも、膀胱三角部や前立腺の平滑筋の興奮を抑えることは可能ですが、中にはその興奮がしぶとく継続する人がいます。
その場合、エブランチルからハルナールへ、ハルナールからユリーフへ、ハルナールからフリバスへと変更を試みます。薬剤の変更で飛躍的に効果の出る人がいます。しかし、若い男性には保険でエブランチルしか処方できませんから、その場合、自費で購入していただいています。苦渋の選択です。

②ベタニス・抗コリン剤の効く人
α‐ブロッカーで平滑筋の興奮が抑えられない場合、違う観点から平滑筋を鎮静させるベタニスを処方します。この薬剤は、頻尿・尿意切迫感・切迫性尿失禁を症状とする過活動膀胱の治療薬ですが、平滑筋を抑えるという観点から処方すると、劇的に効果の出る患者さんいます。

③デパスなどの神経作動薬の効く人
膀胱・前立腺から流出した平滑筋の興奮情報は、近傍の脊髄中枢(主に仙骨仙髄中枢)に流入し、不愉快な症状を生み出します。デパスはこの流出・流入の自律神経の興奮を抑えることが出来ます。また、リリカなどの中枢神経作動薬は、脊髄内の上向路接合部を抑制するので、効果が出ることがあります。

④ザルティアPDE5阻害剤の効く人
平滑筋は一酸化窒素NOによって細胞内のカルシウムイオンが細胞外に放出され緊張がゆるみます。生体は平滑筋内の一酸化窒素NOがいつまでも存在することを許しません。そのため、PDE5という酵素が一酸化窒素NOを分解して、カルシウムイオンが細胞内に流入して平滑筋は収縮します。ザルティアはこのPDE5酵素の作用を阻害する働きがあります。したがって、一酸化窒素NOによって緩んだ平滑筋をなるべくそのままにしようとする作用があります。

⑤抗男性ホルモン剤(アボルブ・プロスタール)の効く人
排尿障害がこの病態の原因ですから、中年以降になり前立腺肥大症になると、排尿障害は増強します。そのためα‐ブロッカーやベタニスだけでは力不足になる人も出てきます。その場合、大きい前立腺肥大症を小さくする、あるいは硬い前立腺を軟らかくするという観点で、抗男性ホルモン剤を処方します。前立腺が大きい患者さんの場合、特に効果が出ます。

⑥抗アレルギー剤の効く人
排尿障害が原因で、膀胱三角部・前立腺の下部尿路が興奮すると、脊髄を介して視床下部中枢を興奮させます。視床下部は自律神経の中枢であり、免疫系統の中枢でもあります。そのため、慢性前立腺炎の患者さんは自律神経失調症や花粉症やアレルギー性鼻炎になる方が多いのです。視床下部を直接作用することは難しいですが、末梢のアレルギー反応を抗アレルギー剤で抑えることで、悪循環を断つことが可能です。α‐ブロッカーで効果のない人には、処方してみるのも一考です。

⑦抗生剤の効く人
クラビッドやミノマイシンなどの抗菌剤・抗生剤は、読んで字の如く、細菌や生命を抑える薬剤です。慢性前立腺炎の症状は、人間の生命活動の発露現象です。当然、抗菌剤・抗生剤によって生命活動の発露現象は抑制されますから症状は軽減します。抗菌剤・抗生剤が効くからと言って、前立腺に細菌感染があるとは限りません。

⑧漢方薬の効く人
漢方薬は、身体の気血水を主軸に五臓六腑の循環を考慮した医学に利用される薬剤です。中国4千年の歴史から実証された経験医学です。現代医学とは必ずしも一致する訳ではありませんが、その分、現代医学では治らない慢性前立腺炎を治す余地があるのかも知れません。

⑨上記の組み合わせで効く人
治療薬は少ないのに越したことはありません。しかし、単剤で効果のある人ばかりはいません。仕方がなく、上記に掲げた様々な薬剤を組み合わせることで、治療効果を高めようとします。その組み合わせは千差万別です。

⑩どの薬剤も効かない人
当然ながら、どの薬剤も効かない患者さんも存在します。次の一手を常に考えさせられる局面に遭遇します。
以前でしたら、仙骨神経ブロックや内視鏡手術だけでしたが、今回の磁気刺激装置の導入で選択肢が増えています。まだ数人にしか治療していませんが、手応えを感じています。

【備考】
上記に掲げた分類は、私の個人的見解から出した分類です。
医師が100人いれば100通りの見解があり、千人いれば千通りの見解があります。それぞれの見解は、医師の基礎医学や臨床医学の習得度合いとその理解度、様々な患者さんに遭遇した臨床経験(失敗体験や成功体験)の積み重ねの結晶です。ダイヤモンドが良い、サファイアが良い、ルビーが良い、エメラルドが良いなどと比較できないように、それぞれの見解にはそれぞれの真実があり、また誤解があります。
一般的に慢性前立腺炎は細菌感染が原因とされ、前立腺液中に細菌や白血球が検出されない時点で症状が軽快したら完治と判断されます。白血球や細菌が検出されないのに慢性前立腺炎症状が改善しない場合、非細菌性慢性前立腺炎と診断されたり、「気のせい」はたまた「ストレス」などと診断されるのが一般的見解であり、通例です。
中には前立腺結石を原因にする素人的な医師も存在します。そのように主張する医師が前立腺結石を前立腺ごと切除をする(泌尿器科医の基本的テクニック)というのも耳にした事はありません。

磁気刺激治療器 Nico Wave 治療効果

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Nicowave
8月の下旬に導入してから1ヵ月ほど経過しました。
その間、男女合わせて26人の患者さんを治療しています。1日多い時に10人、少ない時で5人ほどの患者さんが写真の磁気刺激治療器の椅子に座られています。

治療効果について詳細は追い追い報告するつもりですが、現在の印象として80%くらいの患者さんに何らかの効果があるようです。頻尿が少なくなった、会陰部痛が軽くなった、関連痛が減った、尿の勢いが良くなった等々です。この治療器は女性の過活動膀胱治療器として保険適応が認められていましたが、事前の予想通り慢性前立腺炎の患者さんにも間質性膀胱炎の患者さんにも効果があります。

治療の原理がファラデーの法則だ、渦電流だ、磁気刺激だなどと、いろいろ書きましたが、治療効果としては、間質性膀胱炎や慢性前立腺炎で疲弊した膀胱や前立腺を、磁気電気刺激によって疲労回復やマッサージをしているのでは?という印象です。

今後、症例を重ねれば、もう少し具体的でアカデミックな結果が提示できるでしょう。

不定愁訴満載の患者さんからのレポート#52

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Bns30751sy様々な不定愁訴があり、慢性前立腺炎の診断で当院を平成25年11月に初診した患者さんです。
それまでの症状は、
下半身の強度の冷え・背部痛・腰痛・手足の疼痛・尿臭・ドライアイ・目の疲れ・口角の切れ・口内炎など不定愁訴がてんこ盛りの状態でした。
インターネットで私のブログを読み水分摂取を控えたところ、症状は劇的に軽減しましたが、更なるQOL向上のため当院を受診したのです。

Bns30751echo超音波エコー検査にて前立腺の大きさは19ccと正常でしたが、膀胱三角部の肥厚・前立腺周囲静脈瘤(瘀血状態)・ミュラー管嚢胞・前立腺結石を認めました。この画像だけでも排尿障害が疑われます。ミュラー管嚢胞は先天的な嚢胞性病変ですが、今回の病気とは無関係です。

Bns30751flow尿流量測定検査(ウロフロメトリー)では、勢いのない前立腺肥大症型+ギザギザ波形の膀胱頚部硬化症型の混合型排尿曲線でした。
最大流量率(排尿速度)9.5mL/秒、平均流量率(排尿速度)6.1mL/秒と尿の勢いはかなり弱い状態です。

Bns30751letter膀胱頚部硬化症による排尿障害が原因の自律神経症状の診断でハルナールを処方し、症状は予想通りさらに軽快しました。約1年経過した平成26年10月27日の今日、感想を手紙で頂戴しました。(わざわざ山口県から手渡しに来院されました)

高周波電気メス装置ERBE・VIO300D

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Erbevio300d開業以来3代目になる電気メスを購入し、10月29日に届きました。
ドイツ製のERBE・VIO300Dタイプです。ERBE社の電気メスとしては最高峰の電気メスです。内視鏡手術に特化したバイポーラカット++というモードで切れ味はとてもよく、バイポーラソフト凝固++というモードで止血効果も高いのが特徴です。さらに、今までの電気メスでは内視鏡手術中に細かい気泡が出現して視野を妨げていたのですが、その気泡が非常に少なく、術者のストレスがないというのも特徴です。

TURis-Vという蒸散モードでは、今以上に蒸散効率が高く、今流行りのレーザー手術に引けを取らない効果が実現できます。

排尿障害を示唆する超音波エコー所見

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外来が忙しい時には、尿流量測定検査(ウロフロメトリー)や残尿量測定検査を省いて、超音波エコー検査だけで患者さんの排尿障害を推理・診断することがあります。
超音波エコー所見で得られる排尿障害によると思われる形態学的な変化その根拠を解説しましょう。
①膀胱括約筋の変形 ②膀胱頚部の膀胱内突出 ③前立腺結石 ④前立腺静脈瘤 ⑤膀胱出口の肥厚 ⑥膀胱三角部の肥厚 ⑦前立腺肥大症 ⑧肉柱形成
この8つの所見のどれか一つでも発見できれば、排尿障害を疑います。

それぞれについて解説しましょう。
Echo32841i40pe①膀胱括約筋の変形
膀胱括約筋は膀胱出口の近くに三角形の頂点として観察されるのが正常です。排尿障害が進行すると、膀胱括約筋の間に前立腺が侵入し、膀胱括約筋は次第に膀胱出口よりも遠ざかります。その際に膀胱括約筋の先端が棍棒状に変形したり、ワニ口状に裂けるなどの変形が認められます。また、膀胱括約筋の先端は膀胱出口を刺しているのが正常ですが、排尿障害で膀胱括約筋が尿道足に牽引されるために方向が変化します。
【写真】陰嚢掻痒症で来院された40歳の男性患者さんです。膀胱括約筋の示す方向(赤い矢印)が、膀胱出口(緑の丸)を指していない。膀胱括約筋が裂けている(緑の矢印)。

Echo32850bph54mf20n348ccp②膀胱出口の膀胱内突出
排尿障害により膀胱出口に掛かる圧力は、膀胱出口周囲を凹ませるような力となります。そのため膀胱出口の中心部は膀胱内に突出する形に変貌していきます。通常、恥骨の反対側が突出しやすくなるので、超音波エコー所見錠は、ポパイのシャクレあごの様な形状になり、それが結果的に内視鏡検査で判明する前立腺肥大症の中葉肥大や膀胱頚部硬化症の柵形成に発展します。
【写真】1日20回の頻尿とや夜間3回の頻尿で来院した54歳の男性患者さんです。前立腺の大きさは48ccで普通の2倍以上ですが、膀胱出口が膀胱のライン(赤い線)から2cm以上も突出(白い矢印)しています。ポパイのシャクレあご状態です。
Echo32821i38pe【写真】陰嚢掻痒症で来院した38歳の男性患者さんです。超音波エコーでは膀胱出口がV字(緑の三角)に開いて見えますが、膀胱出口が開くのは排尿の時だけです。これは膀胱出口の周囲が膀胱内に突出したために開いて見えるのです。真実の膀胱出口は赤い破線上にあります。

Echo32841i402pe③前立腺結石
膀胱出口が十分に開かないで排尿すると、前立腺内の尿道にジェット流が生じます。ジェット流は尿道粘膜近傍に渦流を発生させ、その結果、尿道粘膜に微小な傷害が生じます。その傷害部に尿中のシュウ酸リン酸カルシウムが沈着し微小結石になります。微小結石は尿道粘膜から前立腺内に埋没し取り込まれ、前立腺の周辺に蓄積されます。それが集団となって前立腺結石として確認されるのです。したがって、前立腺結石を認めた場合、膀胱出口が十分にひらかないで起きるジェット流が前立腺の中を流れていると判断します。
【写真】初めの写真と同じ患者さんです。位置をずらして撮影しています。不均一な前立腺結石が確認できます。
Echo30771psa139m73pe【写真】73歳男性患者さんです。尿道に沿って前立腺結石が存在しているのが分かります。この患者さんのように前立腺周辺に結石が溜まらず、尿道近辺にそのまま居続ける結石も良く目にします。

Echo32722pp38pe④前立腺静脈瘤
解剖学的に前立腺の前面から側面にはサントリニ静脈叢が存在しますが、超音波エコー検査では通常確認することが出来ません。しかし、排尿障害があり、前立腺周囲に物理的圧迫が絶えず加わると、静脈圧が上昇し、サントリニ静脈叢の血管が拡張し、超音波エコー検査で確認できるようになります。東洋医学国興味のある医師は、これを「瘀血おけつ」と呼んで、血のめぐりが悪いと診断します。
【写真】慢性前立腺炎と診断された38歳の男性患者さんです。会陰部の痛みで来院されました。前立腺の前面に大きく拡張した血管が2つ確認できる。

⑤膀胱出口の肥厚
膀胱出口が十分に開かないで排尿すると、排尿中、膀胱出口は振動します。生体は振動に対して防御反応が生じます。一番振動している部分を丈夫にするために、その部分の粘膜が硬く肥厚します。超音波エコー検査所見では、超音波を強く反射するので、白い影(ハイエコー)として得られる所見です。膀胱出口の前後が山になり、山の頂上に雪がおおっている景色として観察されます。

Echo23449pp31pe⑥膀胱三角部の肥厚
膀胱出口が肥厚すると、そこに連続している膀胱三角部も振動していることになります。膀胱出口が硬くなればなるほど振動数は増しますから、膀胱三角部への影響は一段と増強します。その結果、膀胱三角部が肥厚してきます。膀胱三角部は尿意を感じるセンサーが集約している場所なので、この部分が肥厚して過敏になると、頻尿や痛みなどの症状が作られます。
【写真】会陰部痛・尿道のムズムズ感・陰茎の痒みで来院した31歳の男性患者さんです。今までの診断は慢性前立腺炎でした。膀胱三角部はご覧のように台形状に肥厚しています。膀胱三角部が作る症状の多様性であることが予想できます。

Echo24856bph57cc66pe⑦前立腺肥大症
排尿の際に膀胱出口にかかる物理的な圧力や膀胱出口の振動は、前立腺を直接あるいは間接的に刺激します。生体の防御反応で前立腺は、その力に対抗しようとして硬く大きくなります。結果、前立腺肥大症になります。前立腺肥大症には2つのタイプがあります。一つは線維筋性型と一つは腺性型です。線維筋性型は、前立腺肥大症の成分が線維と平滑筋が主として多いタイプです。腺性型は前立腺肥大症の成分が前立腺組織が主として多い成分です。排尿障害で起こる前立腺肥大症は、主に線維筋性型のタイプです。誤解してはならないのは、前立腺肥大症があるから排尿障害があるのではなく、排尿障害があるから前立腺肥大症があるのだということです。
【写真】尿閉でカテーテルが留置された状態で来院された66歳の男性患者さんです。抗男性ホルモン剤の治療で前立腺肥大症を軟らかくして、自力で排尿が出来るようになりました。赤い矢印で囲んだ部分が前立腺肥大症です。前立腺は通常、三角形に見えますが、前立腺肥大症になるとどこから観察しても丸く球体に見えます。この患者さんの前立腺は大きさが57cc(正常20cc)です。

Echo32038psa68pe⑧肉柱形成
排尿障害が進行して病気として完成されると、膀胱の壁に肉柱が形成されます。膀胱は筋肉で覆われた袋状の臓器ですが、筋肉が均一に分布している訳ではありません。輪状筋や縦走筋が交互に絡み合った構造をしています。膀胱出口が十分に開かないという排尿障害のために、膀胱は排尿の度に筋トレを強いられることになります。それぞれの筋肉は太くマッチョになりますが、筋肉のない所は圧力に負けて凹んでいきます。そのため筋肉のある部分が太い柱のように強調され、肉柱と呼ばれる所見になるのです。肉柱所見をみると、神経因性膀胱と誤診する医師が多いのも事実です。
【写真】前立腺癌ん腫瘍マーカーであるPSA値が高いと心配で愛知県から来院された68歳の男性患者さんです。前立腺の大きさは90cc以上(正常は20cc)もあり、排尿障害が強く示唆されました。緑の矢印で示しているのが、膀胱壁の肉柱です。

【備考】
思いつく超音波エコー所見だけでも上記に挙げる8項目があります。これらを頭に入れて検査をすれば容易に排尿障害は診断できます。前立腺の大きさだけで診断している医師の診断の質が如何に低いか容易に理解できるでしょう。

【診療時間と休診】

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